ヨルガオ-午前0時の逃避行-

咄嗟に切ろうとしたけど、それより早くスマホを奪い取られて。

「もしもーし」と男が挑発するような声で電話に出る。


『……⁉』

「由良か?」

『誰だ、お前』

昇龍(のぼりりゅう)のアイジって言えばわかるか?……この女、お前の女なんだってなぁ。返してほしけりゃ今から言う場所に来いよ」


アイジと名乗った男は、口元に薄笑いを作りながら言う。


背筋を這い上がるような戦慄。

ぞくっと走る何かを無視して、私は叫ぶ。


「由良くん、来ちゃダメ!」

『光莉⁉』

「お前は黙ってろ」


パンッ────。


『光莉!』


弾けるような音は電話向こうの由良くんにも届いたらしい。


頬が熱い。

ひりひりする。

視界が滲む。


──痛い。怖い。


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