ヨルガオ-午前0時の逃避行-
解放されたからといって、絶望的な状況は変わらない。
「かっこいい騎士のお出ましってか?……メット取れよ、由良」
由良くんはヘルメットを取ると、それを後ろ手に私に渡す。
彼らに聞こえないくらい小さな声で、
「これ被って逃げろ」
囁いた。
「……でも」
「お前がいる方が足手まとい」
「……っ」
7対1……ううん、さっき投げ飛ばされた男が立ち上がったから、8対1。
いくらなんでも人数差がありすぎる……。
「なんで呼び出されたかわかってんだろうな」
「知るか」
「てめぇを杏樹のところに送ってやるよ」
「やってみろ」
ピリピリした空気。
「お前らこそ死ぬなよ」
由良くんがそう吐き捨てた瞬間、大きな亀裂が走った。