ヨルガオ-午前0時の逃避行-

なんでそっちの手で。

上げるのも辛そうなのに……。


……ああ、そういうことか。


もう片方の手は血で染まっているから汚せない、という由良くんの優しさをくみ取った私の涙は乾くことを知らない。



「由良くん、あたしもごめんなさい。傍にいたのに……」

「いや、いいよ。あんたのおかげで俺も助かった」

「俺ももっと早く来られたら……」

「……」


澄ちゃんと柊哉くんに謝られて。

由良くんは、柊哉くんからは目を逸らした。



話す時間を設けた方がよかったのかもしれないけど、由良くんの傷の手当てがあるのですぐに倉庫から退散。


「腕、大丈夫?」

「平気」


私は由良くんのバイクの後ろに乗った。



大勢のバイクが駆け抜ける。


湿った空気が身体にまとわりつく。

風を切るというよりは、包まれる。


季節が変わったのだと実感した。



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