ヨルガオ-午前0時の逃避行-
バイクに跨り、ヘルメットを被る。
エンジンをかけて。
「あ、そうだ。由良」
杏樹に呼ばれた。
「なに?」
「俺も言ったんだから、由良も好きな人ができたら言えよ!」
まだヘルメットを被っていない杏樹が、叫ぶようにそう言った。
俺は「教えろ」なんてひと言も言ってないけどな。
「はいはい」
「絶対だぞ。約束だからな」
俺たちは、別方向にバイクを出発させた。
それが、杏樹と交わす最後の約束になるとも知らずに。