ヨルガオ-午前0時の逃避行-
「……海からの帰り道、トラックとぶつかりそうになって……避けきれず横転したそうです……」
「着信履歴から俺に電話がかかってきて、病院に駆けつけたけど……運ばれたときにはもう、心肺停止状態だったって」
一度泣いたのか、柊哉の目は赤く声は鼻声で、いつも冷静な澪も声が震えている。
2人の声は俺の耳にちゃんと届いているのに、聞こえにくい。遠くに感じる。
俺は部屋を出た。
数歩歩いて、壁にもたれながらしゃがみ込む。
涙は出ない。
代わりに、笑みが漏れる。
それも、口元だけに浮かべる酷く冷たい笑み。
「……ふざけんなよ」
言い足りないことがたくさんある。
文句ももっと言ってやりたい。