ヨルガオ-午前0時の逃避行-

それでも私にとってはお父さんとお母さん。

どんな理由で仮面を被っていても、家族であり続けてくれるならそれでいいと思って何も言ってこなかった。


……今までは。



「お母さん」

「ん?」

「……もう、家に藤さんを連れてこないでほしい」


声も表情も心も、酷く落ち着いている。

すべてが冷えきった私とは裏腹に、お母さんの顔が焦りの色を帯び始めた。


「藤さんって?」


お父さんが先に口を開いた。


凪ぐ冬の海のように、私の心は静かに冷めている。

冷然とした態度で。


「お母さんの彼氏」


吐き捨てた。


刹那、気まずそうに顔を背けるお母さんとお父さん。

こういうときは動きがシンクロするんだ。皮肉。



私が突きつけたのは、ずっと沈黙を続けてきた現実。


どうしてお父さんまで背けるのかって?

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