ヨルガオ-午前0時の逃避行-
私はリビングのドアを閉めて、自室に戻った。
ベッドにダイブして、枕に顔を埋める。
どうして腹が立ったのか。
さっきのは全部、八つ当たりだ。
変わらない両親の関係を見て、苛立ちを覚えた。
由良くんと出会う前の日常にあっさり戻ってしまった。
出会ってからのことは全部、幻だったんだ。
そんな気がして、寂しくなった。
由良くんのバイクに乗って出かけた日々、一緒に暮らした日々は、嘘なんかじゃない。
残ったものは僅か。
でも、確かにそれらの日々は存在した。
スマホに残った由良くんの連絡先。
返事はないけれど、今朝送ったメッセージに既読がついていた。
「由良くん……っ」
家族よりも、機械的なそれに温かさを感じる。
涙が出る。
由良くんとの毎日が楽しくて忘れていた。
毎日は当たり前じゃない。
……もう、“また明日”は来ない。