ヨルガオ-午前0時の逃避行-
だけど、それともう1人──澪さん。
「あっちの席空いてるから座りなよ」
奥の席を指して、そう教えてくれた。
促された通りに、隣の席に座る。
僅かにお尻が沈む程度の硬めなレザーソファ。
ソファと同じ黒色であしらえたローテーブル。
普段だったらお目にかかれないような上質さが、私の緊張を増長させる。
だけど……。
「ひえー。これ、いくらするんだろう。絶対汚せないじゃん」
庶民的かつ率直な意見をこぼす澄ちゃんだけが、安心感を与えてくれる。
「だいじょぶだいじょぶ。高そうなのは見た目だけ」
「どうだろうな。ここのオーナー、こだわりが強いから」
あとから柊哉くんと澪さんがやって来て、同じ席に腰を下ろした。
どうやらここのオーナーと澪さんが知り合いらしく、店が開くまでの間、柊哉くんたちの居場所になっているらしい。