ヨルガオ-午前0時の逃避行-

「あー……それは否定できねぇわ」

「うん。それを味わった身としては」


しかたなく笑顔を見せるだけで、誰も否定しなかった。


由良くんは水みたいな人。

掴んだと思ったら零れ落ちてしまう。


3回会っただけの澄ちゃんですら「そんなことないよ」と気休めの言葉をかけないのは、たった3回でも由良くんがそういう儚さを持った人だとわかるから。



「そういや光莉は、由良とどうやって知り合ったの?」


奇を衒ったように澪さんが話題を変えた。


「それ俺も知りたい」

「あたし、話さなかったっけ?」

「出会いまでは聞いてない」


私と由良くんの出会いを話すなら、まずは私の家庭の事情を話さないといけない。

だから澄ちゃんは、柊哉くんに話さなかったんだと思う。


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