ヨルガオ-午前0時の逃避行-

「杏樹さんのことを思い出したくなくて解散させたのに、1番杏樹さんを思い出す場所に光莉ちゃんを連れていった。それって、本当は忘れたくなんかないってことでしょ?」


……そうなの?

由良くんはあのとき、どういう気持ちで海を見ていたの?


私の時間潰しに付き合ってくれたわけじゃなくて、本当は、杏樹さんに会いたくて……だから、目的地が海だったの?


出会ったときの由良くんは、今よりもずっと口数の少ない人だった。

その静かな瞳に何を隠して何を見ているのか、私が知ることはできなかった。


もしそうなら……寂しすぎる。



下がりかけた私の視線。


「もしかしたら由良は、光莉を杏樹に重ねたのかもな」


上げさせたのは、澪さんのその言葉。

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