ヨルガオ-午前0時の逃避行-
『由良くん、おはよう』
まどろみの中、聞こえてくる声も。
『おかえり』
帰りを待ってくれる健気なところも。
『一緒に寝よ』
俺の気も知らないで甘えてくる癖も。
『いってきまーす』
朝から元気な笑顔も。
流れてくるみたいに勝手に呼び起こされる。
こうならないように初めから気をつけていたのに……。
いや、覚悟はあった。
あいつにここにいてほしいと願ったあのとき、俺は、杏樹のことも忘れて光莉の温もりをもとめた。
ここにいればいい。
たとえその判断を後悔することになったとしても、傍にいてほしかった。
呆れる。
『関わるな』なんてどの口が言ってんだか。
自分から欲したくせに。