ヨルガオ-午前0時の逃避行-

こんなときに思い出すのが杏樹の言葉だなんて皮肉にもほどがある。


『好きな人がいるだけで世界がハッピーになるのに』


アホらしいとあざ笑った言葉が、今になって響くなんておかしいだろ。


杏樹も光莉もふざけんなよ。

いろんなもん、俺に残しやがって……。



何を間違えた?


光莉を俺の過去に巻き込んだこと。

家に泊めたこと。

バイクに乗るか誘ったこと。


あの日、杏樹を1人で行かせたこと。

喧嘩に付き合ったこと。

海に誘われてついて行ったこと。


初めから全部、間違えた?



……違う。


光莉への後悔があるとすれば、傷つけてしまったこと。

杏樹への後悔があるとすれば、杏樹が残したものから目を逸らしたこと。



ベッドに腰かけていた俺は、そのまま後ろに倒れ込んだ。

そのとき。


────ピンポーン。


チャイムが鳴った。



◇Side End



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