ヨルガオ-午前0時の逃避行-
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
足音がしたと思ったら突然、由良くんに引っ張られて……。
気づけば、部屋の中──玄関に佇んでいる。
咄嗟に掴まれた手首には、離れたあとも熱が残る。
ほんとっ……、こんなことでいちいち。
揺さぶられる。
私の心はさっきからぎゅっと苦しい……。
「それで、なに?」
「あ、うん。これ……」
今度こそポケットから鍵を取り出した。
私はこれを、最後の砦のように思っていたのかな。
返した瞬間にすべてが終わるような……。
だから、手放す瞬間まで心を残している。
「返すのが遅くなってごめんなさい」
「……」
鍵を由良くんの手に落とした。
すべてが終わるのはそういう気がしているだけ。
本当に終わったわけじゃない。
心残りがあったとしても、決めたことに迷わない。