ヨルガオ-午前0時の逃避行-

声もなく呼吸も乱れていない。

そんな中でも流れる雫。


静かに泣く。

そんな私を由良くんの瞳はどう映しているのかな。


早く枯らさないと、なのに。

俯いたことでするりと離れた由良くんの手が、私の背中に回る──と。


「……っ!」


引き寄せられて。


由良くんの胸に収まった。



……ダメだった。

静かに泣くことも許されない。


「ゆらくん……、好きだよ……っ」

「うん」

「ゆらくんがわたしのこと、いやでも……わたし、どこまでも追いかける……」

「うん」

「……でも、やっぱり……いなくならないでほしい……っ」


溢れる想いが勝手に口から出て、呼吸も乱れる。

それでも……。


「いなくならねぇよ」


由良くんの胸の鼓動、声、言葉、匂い、温もりが、私に安心をくれる。


ぎゅっと強く抱きしめられて。


私もそれに応えた。



< 249 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop