ヨルガオ-午前0時の逃避行-
約束の時間の5分前、忘れ物がないかチェック。
スマホ、お財布、ハンカチ、ティッシュ、ポーチ。
それから、鍵。
自分の家の鍵じゃない。
由良くんの家の合鍵。
昨日返しに行ったのに、
『これ、預けとく。いつでもうちに来ていいから』
そう言って、また鍵を渡されてしまった。
私の宝物。
それも鞄にしまう。
スタンドミラーに自分の姿を映しながら服と髪を整えて。
3分前、家を出る。
「おはよ」
門扉を出たところに由良くんがいた。
「おはよう!もう来てたんだ」
「今来たところ」
毎晩のツーリングが日課だった頃、いつもこうやって待ち合わせしてたっけ。
「なに笑ってんの?」
「懐かしいなと思って」
「……?」
首を傾げる由良くんからヘルメットを受け取って、バイクの後ろに乗る。
腰に手を回して、出発。