ヨルガオ-午前0時の逃避行-
夏の風は、暑さだけを身体に置いて抜けていく。
気持ちいいけど生っぽさが残る風。
暑さには勝てなかったみたい。
鼻腔を掠めるシトラスの香水だけが、爽やかに夏を引き立てる。
やがて、バイクは避暑地のような場所へ入った。
緑色の景色。
ぐんと気温が落ちたのか、風に涼しさが増す。
どこへ連れていってくれるのだろう?
見通しのいい交差点を、他の車が直進する中、由良くんの運転するバイクは左折した。
不意に見えた霊園の文字。
霊園、つまりお墓。
この先に霊園があるらしいけど、看板がないだけで他に何かあるかもしれない。
でもたぶん、目的は……。