ヨルガオ-午前0時の逃避行-
頭の片隅に置いた予想が確信に変わったのは、由良くんがそば屋に隣接された花屋にバイクを止めたとき。
「墓参り用の花がほしいんですけど」
目尻が下がった50代くらいの小柄な女性店員にそう言った。
お墓参り。それが誰のかは、訊かなくてもわかった。
そこから2、3分ほどの場所に霊園はあった。
〈香田家之墓〉
やっぱり。
ここは、杏樹さんが眠るお墓。
「ずっと来れなかった」
お墓を見ながらそう呟く由良くんの横顔は、憂いを帯びていた。
「そうなんだ……。私もついて来てよかったの?」
「光莉がいないと約束を果たせないから」
「約束……?」
「“最後の”な」
花を添えて。
合掌する由良くんに続いて、私も手を合わせて目を閉じる。