ヨルガオ-午前0時の逃避行-
「海は杏樹が好きな場所だった」
帰りに、海が一望できる展望台に来た。
潮風が優しく頬を撫で、潮の香りが鼻をくすぐる。
穏やかに波立つ海を見ながら、由良くんがそう囁いた。
「由良くんは、私を何度も海に連れていってくれたよね。それって、杏樹さんに会いたかったから?」
「違う」
あれ違うの?
わりと確信があったのに、あっさり否定されてしまった。
「じゃあ、どうして?やっぱり走りやすかったから?」
私がそう問いかけると、由良くんは少し考える素振りを見せたあと、ゆっくりと口を開いた。