ヨルガオ-午前0時の逃避行-
やっぱり夜は出歩いちゃダメなんだ。
「夜は狼が出るから気をつけて」なんて昔、先生が本を読みながら教えてくれたっけ。
子どもを怖がらせるだけのファンタジーだって思ってたけど、本当なんだ。
彼らの噛みつくような目。獣のよう。
でも、先生。
行くところがない人はどうすればいいの……?
そんなときだった。
「俺の連れになんの用?」
夜闇に潜む低い声が耳を貫いた。
瞬間、離れる手。私と男たちとの間に大きな背中が割るように入ってきた。
微かな夜風に乗せて、シトラス系の香水の匂いが届く。
私に背中を見せて佇むのは、高身長の男の人。
誰だろう……?
顔が見えないからわからない。