ヨルガオ-午前0時の逃避行-

例えば、どんぶらこと大きな桃が川を流れていたとして、見た人はそれを「桃が流れている」としか思わないだろう。


だけど実は、中で桃太郎を育てるのに必要な行為だとしたら?

川を流れることに大きな意味が生まれる。


私は、桃太郎を育てる時間を、心の安らぎに費やしている。


ある人から見れば無駄遣いのような時間でも、私にとって(もしかしたら由良くんにとっても)必要な時間なのだ。



不意に見上げた。


雲の隙間から月が顔を出した。

かと思えば、また雲に隠れる。


そんな不安定な夜空を見て。


“今週末は大雨に注意”

夕方のニュースで見た文字が頭の中に閃光のように走った。


現在、5月末。来週には6月に入る。

春から夏にかけて、忍び寄るようにやって来るのが雨季。


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