ヨルガオ-午前0時の逃避行-

午前0時前、家に到着した。


いつもこの瞬間は、お別れへの寂しさと明日会えることへの期待感が混在する。


乗せてくれて「ありがとう」と伝え、いつもなら「またね」と言う。


なのに今日は、“ありがとう”のあとに言葉が続かなかった。



「どうした?」

「……ううん、なんでもない」


咄嗟に笑顔で繕う。


誤魔化したつもりはない。

でも、そう捉えられてもおかしくないくらい、わざとらしい反応だったのは自分でもわかった。


「何かあるなら言えよ」


電灯に照らされた由良くんの眼光が向く。



「“また明日”って当たり前じゃないんだよね」


ぽつりと雫を垂らすように出てきたのは、ドラマや映画の登場人物が言いそうなセリフ。


誰かが乗り移ったと錯覚するほど自分の発言とは思えなかったけれど、胸に眠る箱をいくつか開いたらきっとその言葉が出てくる。



もし明日、雨が降ったら……。

こうして由良くんのバイクに乗って海へ行くことはできなくなってしまうのかな。


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