ヨルガオ-午前0時の逃避行-
由良くんはどうやら察しがいいらしい。
国語の問題「作者の意図を解く」よりも言葉足らずだったのに、すぐに読み解いてくれた。
「それって、さっきの話の続き?」
「……うん。雨が降ったら出かけられないよね」
「……」
口調に寂しさを含ませてしまう。
おのずと下へ下へ落ちる視線。
そんな私の顔を上げさせたのは、
「光莉」
深みの中に暖かさと華やかさを隠した深紅色のバラのような由良くんの声。
色を変えずに訊いてくる。
「光莉は、バイクに乗りたいの?俺に会いたいの?」
直球に意思を問われたのは初めてかもしれない。
私の心の状態がもう少し健康的だったら「バイク」と答えていた。
偽る余裕を持っているくらい健康的なら。
だけど、今の私はそれを持ち合わせていない。
「由良くんに会いたい」
初めからそう言いたかった。