ヨルガオ-午前0時の逃避行-
「こんな時間にごめんね」
「いえ……こちらこそ、お母さんが迷惑をかけてごめんなさい」
「しっかりしてるねぇ」
頬を緩める藤さん。
お母さんが心配で気づかなかったけど、よく見たら彼の顔も僅かに赤らんでいる。
「あ、それ麻衣さんの水?俺ももらっていい?」
できれば早く帰ってほしい……。
でも、お世話になってしまったから追い返せない。
食器棚からお客さん用のグラスを取り出して、ミネラルウォーターを注ぐ。
「光莉ちゃんって高校生だっけ?」
そう訊きながら、私の隣に並ぶ藤さん。
な、なんか……近くない……?
「いつもいないけど、彼氏のところに行ってるの?」
1歩横にずれれば、追うように私の隣につく。
なんでそんなことを訊くんだろうという疑問より、なんでこんな距離が近いんだろう?という疑問が浮かぶ。