ヨルガオ-午前0時の逃避行-
こつんと小さな音を立てる、それは……。
『会いたくなったら連絡してこい』
スマホ。
あのとき──チャイムが鳴ったとき、咄嗟にポケットに入れていた。
縋るような気持ちで取り出し、震える手でその人の名前を探す。
由良くん。
初めての連絡がこんな形になるなんて……。
でも、今の私には彼しか頼れる人がいない。
数回の呼び出し音。
『はい』
眠気を含んだ声が電話に出る。
「……っ」
『……光莉?』
由良くん、助けて……っ。
言葉が声に乗らない。
『どうした?』
「……ゆ、っ……ん……」
必死に名前を呼んでも、嗚咽がまじって言葉にならない。
『何かあったのか?』
優しく撫でるような由良くんの声色。
涙が止まらない。
感情だけが先行して、苦しいもどかしい。
……それでもなんとか。
「たす、けて……っ」
君をもとめる言葉を絞り出した。