ヨルガオ-午前0時の逃避行-
「どうした?」
「……っ」
「家で何かあったのか?」
いつもみたいにクールな顔をしてくれれば、もしかしたら夢かも……と思えたかもしれないのに。
由良くんが見せるのは、わかりやすいくらいの憂い顔。
それくらい私はひどい顔をしているってことなんだろう……。
また涙が滲んで視界がぼやける。
なんとか目尻で留めておいたそれは、しかし。
「無理すんな」
由良くんに抱き寄せられた瞬間、緊張の糸が切れたみたいに溢れ出た。
とっくに枯渇したと思っていた涙は未だ枯れることを知らず。
落涙の海に沈みそう。
途切れそうになる息を紡ぎながら、私はお母さんの彼氏が来たこととキスされたことを話した。