ヨルガオ-午前0時の逃避行-
由良くんは、しばらく私を胸に収めたまま、沈黙を続けた。
規則的に脈打つ鼓動。
ゆっくりと穏やかで……。
由良くんの生命を感じながら、その間に私の呼吸が戻る。
動悸も治まり一定の落ち着きを取り戻して、ふと。
「光莉」
名前を呼ばれた。
顔を上げると、涙でぐちゃぐちゃになった私の頬に由良くんが手を添えて。
親指で涙の跡を撫でた。
近くでぶつかる視線。
由良くんのグレーの虹彩が僅かに揺れる。
「うちに来る?」