ヨルガオ-午前0時の逃避行-
バイクに乗って、10分程度。
とあるアパートの前で止まった。
築うん十年を感じさせる象牙色のアパート。
変色して見えるほど壁が汚れているのに対し、鉄骨の柵や階段はなぜか錆ひとつない赤褐色に染まっている。
たぶんそこだけ塗り直したんだと思う。
旧と新がまじったような不思議な建物だった。
駐輪スペースにバイクを置いた由良くんが階段を上がっていくので、後ろをついていく。
直筆の表札を掲げるお宅もあれば、表札がないお宅もある。
ドアポストから数日分の新聞が飛び出しているお宅もあった。
生きているのかな?と少しばかり心配になる。
チカチカした蛍光灯。
その下の部屋のドアを由良くんは……いきなり開けた。
鍵を差し込む素振りすら見せなかったから私はビックリ。
「鍵は……?」
「かける余裕なかった」