ヨルガオ-午前0時の逃避行-
「何か飲む?……コーヒーと水しかねぇけど」
「ううん、大丈夫」
適当に腰を下ろしたけど、そわそわ落ち着かない。
ブラウンとベージュで統一されたお部屋。
綺麗に整とんされている、というよりは、必要最低限の物しかなく生活感が欠けている。
唯一らしさを感じられるのは、テレビに繋がった家庭用ゲーム機くらい。
でも、この部屋が由良くんのだって身に染みてわかる。
包み込むような匂い。
それが香水ではなく由良くん自身のものだったから。
「とりあえず今日は泊っていけ」
「……っ、いいの?」
「帰れないんだろ?」
藤さんが帰っていたとしても、今はあの家に戻りたくない。
「光莉はベッドを使え」
「……由良くんは?」
「俺は床で」
「ダメだよ!」
由良くんが布団を正しながらそんなことを口にするから、咄嗟に声を上げてしまった。
手を止めた由良くんの瞳がちらりとこっちを向く。
「じゃあなに。一緒に寝る?」