ヨルガオ-午前0時の逃避行-
「……帰りたくねぇの?」
「……」
私の心情を探るように彼が訊いてきた。
帰りたくない。
「ならバイクに乗る?」
「……バイク?」
「そう。俺の」
そう言ってずらした彼の視線を追うと、駐輪スペースに1台のバイクが止まっていた。
真っ黒なバイク。
コンビニの明かりのおかげで、輪郭から細かいフォルムまで綺麗に見える。
すごい……!
バイクをじっくり見るのって初めて。
なんというか、
言葉のいらないかっこよさがあって。
それが彼に似合っていると思う。
「いいんですか……?」
「よくねぇけど」
仕方ない、とでも言いたげだった。
「……12時まででいいです。それまで、私を連れ出してください」
「シンデレラかよ」