クールなご主人様は溺愛中
つぶやくように言うと、彼はクローゼットから服を取り出した。


「着替えるから、出てってくれ」


さっきとは違う言い方に、嬉しくなる。


「はい!」


部屋を出ると、柴崎さんを見つけた。


「里奈さん。起こせましたか?」


「はい。今から着替えるそうです」


そう言うと、柴崎さんが驚いたような顔をした。


「では、坊ちゃんが朝食を取っている間に、お部屋の掃除をお願いします」


「はい」


「名前は、教えて貰えましたか?」


「......あ」


わ、忘れてた。


「ゆっくりで大丈夫ですよ」


「はい......」


次は、教えてもらえるだろうか......。


今朝の調子では、心を許してくれる感じもその兆しすらも見えないけど、彼の根が優しいと言っていた、柴崎さんの気持ちはわかる。


彼は、あんなふうだけどどこか優しい。
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