クールなご主人様は溺愛中
「うん。しっかり挨拶もできるし、冬夜がここまでするなら本気なんだろう。
......いいよ、結婚の話は白紙にーー」


「ダメよっ!」


冬夜くんのお父さんの話はお母さんによって遮られた。


「この子はメイドよ?冬夜、馬鹿な夢見てないで現実を見なさい。住む世界が違うのよ!」


最後の言葉は、深く心に突き刺さった。


俯いて、こぼれそうな涙を必死にこらえる。


「母さん、それ以上言うな」


「わ、私は、あなたと会社の今後のためを思って......!」


「俺は、里奈と別れる気はないから」


冬夜くんが私の手を引いて、ドアを開けた。


私も一礼してから、一緒に部屋を出た。


「......」


「......」


無言で冬夜くんの半歩後ろを歩く。


繋がれた手は、はなさなかった。
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