クールなご主人様は溺愛中
そうつぶやくように言うと、驚いたように彼がこっちを見る。


「おつかれ」


どこか柔らかい声でそう返事をしてくれた。


「あの、名前、教えて貰えませんか......?」


「......嫌だ」


「えっ?」


「教えたら、お前も今までのメイドみたいに擦り寄ってくるんだろ?嫌だ」


何か、トラウマでも抱えているんだろうか。


「で、でもっ。名前知らないと、あなたを呼べない......です」


「嫌だ」


......どうして。


「そう、ですか......。ごめんなさい」


調子に、乗りすぎた。


ちょっと、優しくしてくれるからって、名前を教えてくれるだなんて。


それからの車内は、無言。


一言も話さずに、家に着いてしまった。


家に着いて、まず私は柴崎さんの元へ向かった。
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