クールなご主人様は溺愛中
同じように蹴られ、叩かれ、痛みなんて感じなくなってきた頃。


ーーー バン!


突然ドアが開かれた。


いや、蹴り飛ばされた。


「......冬夜くん」


顔を見なくてもわかる。


あのシルエットは間違いなく冬夜くんだった。


「里奈!」


一目散に私の所へやってきて倒れている私を抱き起こす。


殴られてボロボロの私を見て、一瞬泣きそうな表情をして、すぐに母と妹を睨んだ。


「お前ら、許さねえ」


「......待って、私たちは命令されたのよ!」


冬夜くんの瞳がよっぽど恐ろしかったのか、母が焦ったように言った。


「誰に」


怒りの籠った声は、私でも恐怖を感じるほど。


「有栖朱莉よ」


え......。


「あいつがなんでそんなことすんだよ」


「知らないわよ。ただ、里奈を誘拐しろって」
< 262 / 268 >

この作品をシェア

pagetop