クールなご主人様は溺愛中
「遅いな」


私が来ると、そう言った。


「あのね、今日、迎えに来れないらしくてね。私が、歩いて帰るって言ったの。嫌、かな?」


あとから気づいた。


歩きたいのは、私だけかもしれないって。


もしかしたら、冬夜くんは歩きたくないんじゃ......。


「......いいよ。歩こ」


表情が明るくなったのが自分でもわかった。


そんな私に彼は、ふっと笑って先を歩き出した。


「なあ、あれ、何?」


冬夜くんが指さしたのは、クレープ屋さんだった。


「ああ、クレープだよ」


「くれーぷ?」


知らないの......?


「美味しいよ」


小さい頃、パパと一緒に食べたの、覚えてる。


「お前、好き?」


「え、うん」


そう言うと、グイッと腕を引っ張られる。


「行くぞ」


「え、いいの?」


「金なら、ある」
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