クールなご主人様は溺愛中
「澄野さん、怒らないでくださいね」


目の前に座って、同じものを食べている執事さんに言われる。


「え、何をですか?」


「坊ちゃんをです。私は、小さい頃から見てきました。心優しい子です。
冷たいように見えますが、自分にも他人にも厳しいだけなのです」


眉を下げて、困ったように笑っている。


「そんな、私、怒ってなんていませんよ。当然です。急に来たメイドに優しい態度で接する方が難しいと思います」


私自身、人付き合いが得意な方ではない。


自分も、きっと、愛想良くはできないだろう。


「坊ちゃんの幸先がよろしいことですな」


嬉しそうに笑う執事さんは、優しい目をしている。


根は優しいというのも、本当なのだろう。


「あ、あの、お名前を教えていただいてもよろしいでしょうか」
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