氷菓と煙草
「居たら悪いかよ」
私は内心の苛立ちを語気に表す。
暑さとどうでも良いことに苛つき人に当たる。
そういう女なのだ。私は。
「いや」
男は私の返しに特に顔を歪めることもせず、余裕そうに無精髭を触りつつ煙草を吹かし続ける。
その余裕そうな態度にまた苛つき私は防御力の低いサンダルで思い切りベランダの壁を蹴る。
「おー、おー、今日も元気だね」
男は私のこの行動に呑気な台詞を飛ばしてカラケラと笑う。