息絶えたカナリアの涙声
その時だった、ポツリと上から降ってきた雫がカナリアの目元に零れ落ちたのだ。
まるで、カナリアが涙を零したように見える。
突っかかっていたものが切れたかのように、雨が降り注ぐ。
男は大事にカナリアを抱きかかえ傘を持って家を飛び出した。
近くの公園までいくと、一つの木の下にカナリアを埋める。
「結局、お前は俺に何を言いたかったんだよ」
少し膨らんだ土の上に向けて言葉を放っても、返ってくる言葉はない。
雨音はカナリアの鳴き声に程遠い低い音を響かせる。
しかし、男にはこの雨音さえカナリアが鳴いているように聴こえていた。
そして男は、ふと何かを思い出したかのように家に走って帰る。
テーブルに原稿用紙を並べて、鉛筆を持ってスラスラと言葉を綴っていく。
突然、男の前に現れたカナリアは幸せの青い鳥ではなかったが男の何かを動かした。
「黄色のカナリア......違う!!......はっ!」
男は原稿用紙の一番最初の一行に題名を書く。