息絶えたカナリアの涙声
何気なく外を見るとベランダに一匹の黄色の鳥が佇んでいる。
アパートの2階に住む男は少し驚いていた。
高くもないこの場所に何のために鳥が来るのか、と。
目立つ黄色の体を持つ鳥は一向に飛ぼうとしない。
男が窓を開けて近づいてみるも逃げることなくじっと男の方を向いてる。
しゃがんで手をだしてみれば、黄色の鳥は男の手の平に自ら飛び乗ったのだ。
「お前、人馴れしているな。野生じゃないだろ」
鳥に話しかけても返事なんて返ってくることがないのを知っていながらも、男はついつい口を開いていた。
撫でてあげれば気持ちいいのか、自ら体を指へと擦り付けるようにして求めてくる。
僻んだ男が鳥を見て愛らしい、そう思ったとき鳥は小さな翼を羽ばたかせて飛び立ってしまったのだ。