息絶えたカナリアの涙声
翌日、バイトから帰ってくると昨日のカナリアが同じ場所に居座っている。
「何しに来るんだよ」
溜め息混じりの一言を吐きながらも男は、カナリアに近づく。
カナリアは昨日と同じように自ら男に寄り添って来る。
「何が目的でくるんだ?お前は誰に飼われている」
男の質問に返ってくるのはカナリアの鳴き声だけ。
「俺の質問に答えているつもりか?鳥語なんて理解できねーよ。人間の言葉で話せ」
カナリアに無理難題言って自己嫌悪に陥る。
春の暖かい風が吹けば、カナリアは翼を広げて飛立つ。
「もう、来るな」
飛び去ったカナリアを見ながら男は言い放った。