息絶えたカナリアの涙声
カナリアが来て特に変わったことなんてない。
普通の日常を送っている。
あの黄色のカナリアが俺にとっての青い鳥になれば、こんな生活とはおさらばなのに。
男はカナリアに少しの希望を抱いているのだろう。
自分にとっての青い鳥になってくれることを、心のどこかで期待しているんだ。
「ハッ。バカみてーだな。小説じみたことは現実じゃ起こりうることねーのに」
自嘲的に笑った男は遠くを見つめていた。
カナリアは翌日、翌々日と男のもとを訪れてくる。
触れると期待をしてしまいそうな男は窓を開けることを、止めた。
カナリアは数分程居座れば飛立ってしまう。