天馬くんは危険です!〜イケメン男子と政略結婚〜
背を向けた天馬くんに今すぐ抱きつきたくなる。
嘘だよって。
大好きだよって。
言えたらどんなにいいだろう。
涙が溢れてきそうだけどダメ、まだ天馬くんが屋上から出て行ってないのに。
どうか振り向かないで……。
私の願いが届いたのか、天馬くんは一度もこっちを振り向かないまま私の視界から消えた。
軽蔑されたと思う。
天馬くんはあんなに優しくしてくれていたのに。
だからもう私を笑顔で呼ぶことも、からかうこともないだろう。
なんでかな、こんな時に浮かぶのは辛いとき心の支えになってくれたこと。
大泣きした時、私に触れていた手がすごく優しくて……。
でももう二度とそんな風に触れてくることはないんだ。
ぼろぼろと零れ落ちる涙。
もうそれを受け止めてくれる人はいなくて。
寂しくて寂しくて私は声を出して泣いた。