天馬くんは危険です!〜イケメン男子と政略結婚〜
あの場では涙も出なかった。
でもやっぱりショックだったのかその後の記憶がなくなって……。
「私……いつのまにか気を失ってたらしいの」
「うん、でもそんときにはもう誰かが消防に連絡してくれてたみたいで、すぐ救助されたから」
「そうだったんだ」
「あん時、ちひろの名前も聞いてなかったことすげー後悔してさ」
「お父さんが亡くなってからすぐに引っ越したんだ、お母さんがお父さんの思い出が詰まってる家にはもう住めないって……」
「だからか、親が探したとき名前は知れたけど家はもう違う住所になってたって」
「私の事探してくれてたんだ……」
お父さんが亡くなってショックだったのと葬儀とかでばたばたしてて、事故の時のことは断片的にしか覚えてなかった。
「忘れられなかったんだよ、俺と同い年くらいの子が自分も大けがしてんのに俺のこと必死に助けてさ」