泣きたがりの君に優しい歌をあげる
「あの、瀬野川さん」
「え?どうしたの?」


突然自分の名前を呼ばれたので驚いてしまった。

ちょっと変な顔をしているかもしれない。


「ふ、何そんなにびっくりしてるの?」
「し、してないよ!」
「それならいいのだけれど…」


鳴海くんはくくっと笑いを一生懸命にこらえている。

それが余計に恥ずかしくて、先ほど少しだ火照りのおさまった頬がまた熱をもつ。


(鳴海くんってやっぱりイケてない男子なんかじゃない!)


なぜか彼の声を聞くと心臓がドキドキとする。


「ねえ、瀬野川さん?」
「あ、うん」
「僕、教科書まだ持ってないから見せてくれないかな?」
「そ、そうだよね!気が付かなくてごめん」


そんな事を言っていると鳴海くんが席を寄せてくる。


(いい香り…)


私の机に彼の机がくっついた瞬間に柑橘系の香りがした。


(香水とかつけてるのかな?)


意外とおしゃれな…わけないか…。


「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」


ボサボサ頭、分厚いメガネをかけている彼を見て「おしゃれ」なんて思った自分の考えを急いで訂正した。
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