泣きたがりの君に優しい歌をあげる
その時、眼鏡の奥の瞳が見えた気がした。


(え?瞳、綺麗?)


「瀬野川さんって本当に面白いよね。今日初めてあったとは思えない感じ」
「そうかな?」
「うん。しかもすごく話しやすいし」
「それなら良かった」
「僕、あんまりこうして同い年の人と話した事ってないから、すっごく新鮮だな」
「そうなの?兄弟とかは?」
「僕、一人っ子なんだ」
「そうなんだ…」


うんうん、と頷いて


「一人っ子かぁー、私はお兄ちゃんがいる」
「そうなの?羨ましいな。お兄さんって憧れてた」
「うるさいよー、兄は」


そう言って顔を歪ませると、また鳴海くんは楽しそうに笑う。


「瀬野川さんって、なんだかいいよね」
「なんで?」
「いつも楽しそうだし」
「まあ、楽しいかな。特に真夏くんの事考えてると」
「ごほっ!」
「大丈夫?」


真夏くんの話題を出した瞬間に鳴海くんがむせるものだからびっくりして大きな声が出る。


「瀬野川ー、どうしたんだ?」
「あ、なんでもありません」
「ちゃんと授業聞いてろよ?次の問題当てるぞ?」
「遠慮しておきます」
「遠慮はいらないぞー」
「本当に足りてるので」


そう言いながら手を挙げるとクラスから笑いが起こった。


「鳴海くん、風邪?」
「ううん、ちょっとね」
「そっか、辛かったら言ってね」


それだけ言うと私は教科書の文字を追った。
< 23 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop