泣きたがりの君に優しい歌をあげる
真夏くんが歌ってくれた歌は、当時とてもはやっていた女性アイドルの歌だった。遠くまで紙飛行機を飛ばして、勇気を出して生きていこうという、私にぴったりの曲だった。
そして真夏君のまだ変声期前の歌声は雪の結晶のようにキラキラとかがやいていた。
「すごいね!絶対にこれから先、テレビで真夏くんの歌を聞く日が来ると思う」
「あたりまえ!待ってろよな」
そういって私は彼と別れた。
知っているのはお母さんの田舎にいたということと真夏という名前だけ。
わたしは田舎から帰ってすぐに学校に復帰した。音楽のテストも気にせずに受けた。それはいつも真夏くんの心からの声が頭に残っていたからだ。
そして時は流れ……