続・拗らせDKの偏った溺愛
そうして準備が万端に整った竜也くんを先頭にした騎馬に、騎士である野田くんが恐る恐る乗りました。
野田くんの下で、竜也くんを先頭にした騎馬役の3人がタイミングを合わせています。
気づけば、それはそれはものすごい大歓声が上がっています。
よく見ると、他のクラスの皆さんもこちらを見て手を叩いたり声を上げたりして盛り上がっているようです。
「いくぞ!」
竜也くんが掛け声を掛けると、野田くんを騎士として担いだ騎馬役の3人が、初めて組んだとは思えないスムーズさで、すっくと立ち上がりました。
「「「お〜!!!」」」
思わず一緒になって“おぉっ”と声が出てしまうくらい、竜也くんを正面に、さらにがっしりとした体格の野田くんを騎士に据えた騎馬は迫力があります。
始まる前から大盛り上がりの乱戦ですが、いよいよ体育祭実行委員長が朝礼台の上に登っていきます。
この後、実行委員長による開始合図があるのです。
一歩一歩。段をゆっくり踏みしめて、朝礼台の上に緊張感いっぱいの顔で立たれました。
「…キーン…」
無駄にマイクから耳障りな音がしたのでビクッとされていますが、なんとか気を取り直した実行委員長。
「それではこれより乱戦です。一同見合って〜!」
マイク越しに、思いの外、通りの良い実行委員長の声が聞こえてきました。
先ほどまでの大騒ぎが嘘のように静かになります。
「・・・・・始め!!!!!」
いまだになくならないキィーンという嫌な音を掻き消すためなのか、今日1番の大声を張り上げた実行委員長の声を皮切りに、再びグラウンドは大歓声に包まれました。
「野田!!死んでも落ちるなよ!」
竜也くんはそう言うと、初めて見せるやる気に満ちた表情で近くにいた騎馬へと向かって行かれました。