続・拗らせDKの偏った溺愛
「伊村くんすごいです・・・!」
私が思わず声に出したのを、虎谷くんが丁寧に拾ってくださいました。
「本当にすごいね。野田くんの力押しじゃ太刀打ちできないのも無理ないかもね」
「そうなんです、伊村くんはすごいんです!なんと言っても、我が家の道場で黒帯獲得最年少記録保持者なんです!!」
虎谷くんの伊村くんに対するストレートな賞賛に、私も自分のことのように嬉しくなってしまいます。
ニコニコしながら虎谷くんを見上げると、すこ〜しばかり微妙な笑みを浮かべてらっしゃいます。
???
「美咲ちゃんって、苦手というほどではないけれど、自分から積極的に男子に話しかけるタイプの女の子じゃないから油断してたよ・・・」
「油断、ですか?」
なんのことかさっぱりわからないことを突然おっしゃる虎谷くん。
漫画なら、私の頭の上に大きなクエスチョンマークがたくさん浮かんでしまいそうです。
「トラくん、わかってるとは思うけど、美咲にそーゆーの無理だからね?」
綾乃ちゃんまで私に理解できない話を・・・。
「うん。でも、綾乃ちゃんもわかってると思うけど、竜也はそういうのもっと無理だからね?そのくせ独占欲だけはあるっていう・・・」
虎谷くんがそう言ったかと思うと、綾乃ちゃんと揃って
「「はぁ〜」」
と仲良くため息をつかれる始末。
話の意味は理解できませんが、私が残念がられている感じは伝わってきます。
「えっと・・・」
とりあえず、何かを言わなくては、と思ったのですが、それは大勢の悲鳴のような声によってかき消されてしまいました。