続・拗らせDKの偏った溺愛


慌てグラウンドに目を戻すと、伊村くんに鉢巻きを取られて呆然とする野田くん。

悔しそうに伊村くん見上げる竜也くんたち騎馬メンバー。

その正面で嬉しそうに全員で盛り上がって喜ぶ伊村くんとその騎馬メンバー。

思い描いていたシーンそのものを目にした私は、逆にどこに新しい悲鳴の必要があったのかわからず戸惑ってしまいました。


「斎藤!逃げろ!!」


私たちのクラスの男子の1人が大声で叫んで、やっと悲鳴の意味が飲み込めました。

野田くんが取った鉢巻きを持つ役だった斎藤くんは、常に応援旗を持って側にいる旗持ち役でもあります。

その斎藤くんに後ろから忍び寄っていたとあるクラスの騎馬。

その存在にいち早く気づいた方達の悲鳴だったのです。

当の斉藤くんはというと、


「逃げろ!!」


という声に反応してハッと後ろを振り返っています。


「斎藤、振り返るな!前を向いて走れ!!」


隣にいた虎谷くんが珍しく大きな声で叫ばれました。

振り返ることで、その場に足止めされた形になった斎藤くんを、後ろから虎視眈々と狙っていたであろう騎馬。

今やその上に乗る騎士役の方の腕が、騎馬の上から地上に近い場所にある斎藤くんの手にある鉢巻きの束に向かって伸びています・・・!!!!
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