続・拗らせDKの偏った溺愛
寛いだ雰囲気で競技を眺めつつ竜也くんと虎谷くんが談笑しているからか、竜也くんの新たな一面を発見して親近感が増したという女子の面々が少しずつお二人の周りに集まって来られました。
気づくと、いつの間にか竜也くんを囲む女子の皆さんが壁のようになって私と竜也くんの間に立ち塞がっています。
虎谷くんの周りも同じです。
ただ、こちらは綾乃ちゃんも虎谷くんと一緒に囲まれているので、私1人がポツンと座っているという状態です。
おまけに私の姿が完全に竜也くんと虎谷くん、綾乃ちゃんの視界から隠れたからでしょうか。
怖い顔をした女生徒、おそらく先輩と思われる方が無言で私を見つめたまま、顎でグラウンドとは反対方向を指し示されました。
・・・これはとうとうお呼び出し、というやつでしょうか・・・。
多少の躊躇いはありますが、いずれあるだろうと想像していたことです。
後に回すより、さっさと済ませてしまいましょう。
なんと言っても相手は女子です。せいぜい肩を押されるとか、罵倒されるといったことに違いありません。
とにかく黙って相手の気が済むまで俯いていれば、そのうち気が済まれるのではないでしょうか。
少女漫画の1シーンを脳裏に思い浮かべながら、私はそっと立ち上がって怖い顔の先輩の後ろをついて行くことにしました。
芸能人ばりにファンが多い竜也くんの近くにいれば起こり得るトラブルを、普段読んでいる可愛らしい少女漫画になぞらえて勝手に結論づけた私の浅い読みが、その直後、完膚なきまでに覆されるとも知らずに。