やわく、制服で隠して。
「何…て…?」

「ははッ…。何も死ねって言ってるわけじゃないじゃない。いいから黙って言うこと聞きなさい。」

「嫌だよ!絶対に嫌!私は深春と離れない!」

「いい加減にしな!何度も何度も何度もアンタは!知らなかったなんて嘘だね!?ずっとあの女と繋がってたんじゃないの!?そうじゃないならこんなおかしなこと有り得ないじゃない!」

何がどうなっているのか分からない。
ママは深春のお母さんを憎んでいる。
それはもう誤魔化しようがないほどに、はっきりと。

どうしてこうなってしまったのか。
何故ママと深春のお母さんがこんなことになっているのか、聞きたいのはこっちのほうだ。

私は本当に、高校の入学式で深春に出会った。
それまで他校の生徒や男子と遊ぶことはあったけれど、深春の噂だって聞いたことは無かったし、見かけたことも無い。

私の家も、深春の家も、高校までは歩いて行ける距離だけど、家は反対方向だ。
小学校も中学校も学区が違う。
この辺は学研都市だから、学校も多数ある。
部活が同じでたまに試合で会うとか、そういうことでも無い限り、他校の生徒のことなんてそうそう知ることは無い。

深春のお母さんはママの旧姓を知っていた。
そして私がママ似だと分かったのは、私がママの学生時代に似ているっていうこと。
二人は今の私と深春くらいの年齢の頃に出会っていたのではないか。
そしてその頃に何かが起きたんだ。

ママの実家はこの町からは車で二時間以上はかかる他県だ。
深春のお母さんは…どうだろう。
でも確か…、実家もこの辺なのに、おじいちゃん達にあった記憶はあんまり無いって言っていたような気がする。
ママの実家は本当にずっと、今の場所なの?

何がどうなって、こんなにもママを追い詰めているのだろうか。

「とにかくアンタはもう、あの学校には通わせないから。」

「そんなの絶対に嫌。」

「アンタがあの学校に行ったからこんなことになってるの!責任取りなさいよ!」

「何でよ!ママだってあの学校に合格したこと喜んでくれたじゃない!」

「そんなこともうどうだっていいのよ。編入や、もし退学したって、あの子に会えなくなったって死ぬわけじゃないでしょ。」

「死ぬんだよ。」

死ぬ。
私の言葉を聞いて、ママが嘲笑うような声を出した。

「死ぬ?は?何言ってんの。」

「死ぬのと一緒だって言ってんの。深春に会えなくなるのなら。生きてる意味なんてない。死ぬのと同じだよ。死んだほうがマシ。」

「本当に…気持ち悪いわね。」

「さいってい…。最低だよ、ママ…。」

「じゃあ、ねぇ、死ねば?」

「…ママ?」
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